どこまでも行く

宇宙は限りなく膨張している そして 私たちが住んでいる銀河はいつの日か 近くにある銀河と衝突するのだという でも だからなんだっていうのだろう 地球温暖化による気候変動のせいで 極地や山岳の氷河が溶け出して 環境が変わってしまうのだという そんなことを聞いても 何も揺らがない IoTがプライバシーを追いやり ビッグデータが私たちを追い詰め 社会が 人が 変わってしまった そのなかで 私たちは生きている 変わったのは 宇宙でも地球でもない 私たちが変わり いろいろ失ってしまった 道に迷ってしまい 方向を失って 未来が描けなくなり 希望を失った 見たものを信じなくなった人たちを 信じさせる言葉はもうどこにもない 混乱した情報と不確かな知識とが 不安に満ちた暗闇を広げてゆく 理解できないことに囲まれて 何かがおかしいと感じている 数字だけをあげつらう社会のなかでは 私たちも数字になってしまう 心が通わない 愛を知らない 話が通じない 会話ができない 人工知能が人を追いやって 孤独な点だけが広がってゆく スポーツだったり ゲームだったり ドラマだったり アニメだったり 逃げる場所を失ってしまった私たちは 考えることを止めて 無害なことに夢中になる 本当は ただ考えたいだけ 私たちは 自由になりたいだけ 雲のように漂い 水のように流れ 居心地のよい場所に 身を置くことを夢見る 夢を見て どんなに時空を彷徨っても 居心地のよい場所にはたどり着けない このどうしようもない社会から逃げたい まだ自分の判断で逃げられるうちに ウイルスが私たちの遺伝子を変え 私たちのすべてを変えてしまう前に 私は逃げる カネだけの社会から 私は逃げる この生きづらい社会から 君とふたり 手探りで進んでゆく ふたりだけの意味を探しながら 僕たちの計画の地図を頭に入れて 迷わないようにして どこまでも行く